以前の記事では、訪問看護管理者としてスタッフとの関わりで大切にしていることについて書きました。
訪問看護ステーションの管理者になってから、スタッフの育成について考えることが増えました。
新人スタッフの育成ももちろん大切です。
でも、事業所全体を見ていると、中堅スタッフの存在がとても大きいと感じるようになりました。
現場のことが分かっている。
利用者さんやご家族との関わりも経験している。
緊急対応や重症ケースにも、少しずつ対応できるようになっている。
そんな中堅スタッフが、事業所の中でどのように力を発揮していくか。
そこが、訪問看護ステーションの働きやすさや、ケアの質にも関わってくると思っています。
ただ、中堅スタッフは「できる人」として見られやすいからこそ、気づかないうちに負担が集まりやすい存在でもあります。
任せることは大切です。
でも、任せるだけではなく、支えることも同じくらい大切だと感じています。
この記事では、訪問看護ステーションで中堅スタッフを育てるために、管理者として大切にしたいことについて書いてみます。
中堅スタッフの存在は、事業所の雰囲気に影響する
訪問看護ステーションでは、中堅スタッフの存在が事業所の雰囲気に大きく影響すると思っています。
管理者や主任だけで、現場のすべてを見ることはできません。
日々の訪問、申し送り、記録、電話対応、家族対応、緊急時の判断。
そうした現場の細かい部分では、中堅スタッフの動きや声かけが、周りのスタッフを支えていることがあります。
新人スタッフが困っているときに、少し声をかける。
利用者さんの状態変化について、一緒に考える。
記録や報告のポイントを伝える。
緊急対応のあとに、「大丈夫だった?」と気にかける。
そういう小さな関わりが、事業所の安心感につながっていくのだと思います。
管理者がすべてを指示する職場よりも、現場の中で自然に相談や共有が生まれる職場の方が、働きやすいと感じます。
その中心になりやすいのが、中堅スタッフです。
だからこそ、中堅スタッフが疲弊していたり、孤立していたりすると、事業所全体にも影響が出ます。
反対に、中堅スタッフが安心して力を出せていると、事業所の空気も少し安定します。
中堅スタッフを育てることは、その人だけを成長させることではありません。
事業所全体の土台を整えることにもつながっているのだと思います。
中堅スタッフは「できる人」として負担が集まりやすい
中堅スタッフは、現場を任せられる存在です。
だからこそ、どうしても仕事が集まりやすくなります。
重症ケースをお願いする。
緊急対応をお願いする。
新しい利用者さんの初回訪問をお願いする。
家族対応が難しいケースをお願いする。
新人スタッフのフォローもお願いする。
一つひとつは必要な依頼だったとしても、それが積み重なると、本人の負担は大きくなります。
「この人ならできる」と思って任せることはあります。
でも、「できる」からといって、ずっと無理ができるわけではありません。
むしろ、できる人ほど弱音を言いにくいことがあります。
自分がやった方が早いと思ってしまう。
周りに頼るより、自分で抱え込んでしまう。
忙しくても、表面上は普通に見える。
そういうこともあると思います。
管理者として気をつけたいのは、中堅スタッフを便利な存在にしないことです。
頼れる存在だからこそ、頼りすぎていないかを見る必要があります。
訪問件数だけではなく、ケースの重さ。
緊急対応の回数。
家族対応の負担。
新人フォローに使っている時間。
記録や連絡にかかる見えにくい負担。
そういうものも含めて、中堅スタッフの状態を見ることが大切だと感じています。
任せることと丸投げすることは違う
管理者として判断に迷う場面については、別の記事でも書いています。
スタッフ育成において、任せることは大切です。
任されることで、スタッフは経験を積みます。
自分で考える機会が増えます。
判断する力も少しずつ育っていきます。
ただ、任せることと丸投げすることは違います。
「このケースお願いね」と伝えるだけでは、育成にはならないことがあります。
何を見てほしいのか。
どこで相談してほしいのか。
どこまで任せるのか。
判断に迷ったときは誰に確認するのか。
訪問後に振り返る時間があるのか。
そういう部分が曖昧なままだと、任された側は不安を抱えやすくなります。
特に訪問看護は、一人で現場に向かう仕事です。
事業所で「大丈夫」と思っていても、実際に利用者さんの家に入ると、迷う場面はたくさんあります。
本人の状態。
ご家族の不安。
生活環境。
医師の指示。
ケアマネジャーとの情報共有。
その場で判断しなければならないことが出てくることもあります。
だからこそ、任せる前後の関わりが大切だと思っています。
事前に情報を整理する。
不安な点を確認する。
訪問後にどうだったか聞く。
必要があれば一緒に振り返る。
任せることは、放っておくことではありません。
任せながら、必要なところで支えること。
そのバランスが、中堅スタッフの育成には大切なのだと思います。
できていることを言葉にする
中堅スタッフには、できていることがたくさんあります。
でも、できることが増えるほど、それが当たり前のように見えてしまうことがあります。
難しいケースに対応できた。
ご家族への説明が丁寧だった。
状態変化を早めに共有できた。
新人スタッフに分かりやすく伝えていた。
記録の内容が整理されていた。
緊急対応後の報告が落ち着いていた。
そういう一つひとつは、決して当たり前ではありません。
管理者としては、できていないことに目を向ける場面もあります。
提出物が遅れている。
報告が足りない。
判断が曖昧になっている。
役割が偏っている。
そういう課題を見ることも必要です。
でも、課題だけを伝えていると、スタッフは「できていないところばかり見られている」と感じてしまうかもしれません。
だからこそ、できていることも言葉にすることが大切だと思っています。
大げさに褒める必要はありません。
ただ、「あの対応は助かった」「あの共有は分かりやすかった」「あの声かけは良かった」と、具体的に伝える。
そうすることで、スタッフ自身も自分の強みに気づきやすくなります。
中堅スタッフは、次の役割に進む途中にいる存在でもあります。
自分が何を期待されているのか。
どこが強みなのか。
どこを伸ばしていけばいいのか。
それが分かると、働き方や成長の方向も少し見えやすくなると思います。
中堅スタッフに期待する役割を明確にする
中堅スタッフに対しては、期待する役割を言葉にすることも大切だと思っています。
「中堅だから分かるよね」
「経験があるからできるよね」
そういう空気だけで役割を求めてしまうと、本人は何を期待されているのか分からなくなることがあります。
現場を引っ張ってほしいのか。
新人をフォローしてほしいのか。
重症ケースを担ってほしいのか。
情報共有の中心になってほしいのか。
将来的にリーダーや管理者に近い役割を期待しているのか。
期待していることが曖昧なままだと、スタッフも動きにくくなります。
逆に、役割が少しでも明確になると、自分が何を意識すればいいのかが分かりやすくなります。
もちろん、いきなり大きな役割を求める必要はありません。
まずは、得意なところから少しずつ任せる。
新人スタッフの相談に乗る。
緊急対応後の振り返りに入る。
利用者さんの情報整理を一緒に行う。
小さな改善提案を出してもらう。
そういう経験を積む中で、少しずつ役割が広がっていくのだと思います。
管理者として大切なのは、期待を押しつけることではありません。
本人の強みや不安を見ながら、次に伸ばせそうな役割を一緒に考えること。
そして、必要な支援をしながら任せていくこと。
それが、中堅スタッフの育成につながると思っています。
フォローする側の負担も見落とさない
中堅スタッフは、新人スタッフや経験の浅いスタッフをフォローする立場になることがあります。
質問を受ける。
訪問前に情報共有する。
記録を確認する。
対応に迷った場面を一緒に振り返る。
そういうフォローは、事業所にとってとても大切です。
ただ、フォローする側にも負担があります。
自分の訪問や記録をしながら、他のスタッフの相談にも乗る。
緊急対応や重症ケースを担当しながら、新人の不安も受け止める。
その状態が続くと、中堅スタッフ自身が疲れてしまうことがあります。
管理者としては、フォローをお願いするだけでなく、フォローしている人の状態も見ておく必要があります。
相談される回数が増えすぎていないか。
自分の記録時間が削られていないか。
負担の重いケースが重なっていないか。
本人が休めているか。
フォローする側が孤立していないか。
中堅スタッフに支えてもらうだけではなく、中堅スタッフ自身も支えられている状態をつくること。
そこを忘れないようにしたいです。
育成は、誰か一人に任せればいいものではありません。
事業所全体で、新人も中堅も管理者も、それぞれが支え合える形をつくることが大切なのだと思います。
失敗や迷いを一緒に振り返る
中堅スタッフを育てるうえで、振り返りの時間も大切だと感じています。
訪問看護の現場では、迷う場面がたくさんあります。
利用者さんの状態をどう捉えるか。
ご家族への説明をどうするか。
医師やケアマネジャーへ、どのタイミングで報告するか。
緊急対応として動くべきか。
次回訪問まで様子を見るのか。
あとから考えると、「もっと早く相談すればよかった」「違う伝え方があったかもしれない」と思うこともあります。
そういうときに、ただ責めるだけでは育成にはなりません。
何が起きていたのか。
どこで迷ったのか。
どんな情報が足りなかったのか。
次に同じような場面があったら、どう考えるか。
そうやって一緒に整理することで、次につながる経験になります。
もちろん、利用者さんの安全に関わることは、曖昧にしてはいけません。
必要な基準は伝える必要があります。
でも、失敗や迷いを「怒られるもの」にしてしまうと、スタッフは相談しにくくなります。
大切なのは、失敗をなかったことにすることではなく、次に活かせる形で振り返ることです。
中堅スタッフにも、迷いはあります。
経験があるからこそ、責任の重さを感じることもあります。
だからこそ、管理者としては、迷いや不安を一緒に整理できる関係をつくっていきたいと思っています。
中堅スタッフの成長は、管理者自身の成長にもつながる
中堅スタッフの育成について考えることは、管理者自身の成長にもつながると感じています。
スタッフに任せるには、管理者自身も整理できていなければいけません。
何を任せたいのか。
なぜ任せるのか。
どこまで支援するのか。
どのタイミングで振り返るのか。
そのあたりが曖昧だと、スタッフも不安になります。
また、スタッフの強みや課題を見るためには、日頃からその人の働き方を見ておく必要があります。
ただ訪問件数だけを見るのではなく、利用者さんとの関わり方、報告の仕方、周囲への声かけ、困ったときの相談の仕方などを見る。
そうすることで、その人に合った関わり方が少しずつ見えてきます。
管理者としては、つい自分でやった方が早いと思ってしまうこともあります。
でも、それではスタッフは育ちにくいです。
任せることには時間がかかります。
説明する時間も必要です。
振り返る時間も必要です。
最初は遠回りに見えることもあります。
それでも、中堅スタッフが少しずつ力をつけていくことは、事業所全体の力になります。
そして、それを支える過程で、管理者自身も「人を育てる」ということを学んでいくのだと思います。
まとめ|中堅スタッフを育てることは、事業所の土台を整えること
訪問看護ステーションで中堅スタッフを育てることは、とても大切だと感じています。
中堅スタッフは、現場を支える大きな存在です。
利用者さんやご家族との関わり。
新人スタッフへの声かけ。
緊急対応や重症ケースへの対応。
情報共有や事業所の雰囲気づくり。
そうした場面で、中堅スタッフの力は大きいと思います。
ただ、その分、負担が集まりやすい存在でもあります。
「できる人」だからといって、任せるだけにしないこと。
役割や期待を言葉にすること。
できていることをきちんと伝えること。
フォローする側の負担も見ること。
失敗や迷いを一緒に振り返ること。
そういう関わりを通して、中堅スタッフが安心して力を出せる状態をつくっていきたいです。
中堅スタッフを育てることは、その人だけのためではありません。
スタッフ同士が相談しやすくなり、現場の判断が少しずつ安定し、利用者さんへの支援も継続しやすくなる。
結果的に、事業所全体の土台を整えることにつながると思っています。
管理者として、まだまだできていないことも多いです。
それでも、任せるだけではなく、支えながら育てること。
頑張れる人に頼りすぎず、事業所全体で力を出せる形をつくること。
これからも、中堅スタッフの力を大切にしながら、少しずつ働きやすい訪問看護ステーションをつくっていきたいです。

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